ハニー、俺の隣に戻っておいで
ただの焼き芋なのだ。そんなに高いはずがない。 ミシェルは初め、ニーナからお金を受け取るのは気が進まなかった。しかし、両親が、今のような場合なら受け取るべきだと言っていたのを思い出した。 人は貧しいほど、たくさん支えを持っているものだ。 ニーナに敬意を表すためにも、支払いを受け入れる必要があった。

ミシェルは「1ドルよ」と言って、可愛らしい笑顔でジェスチャーを送った。 彼女は、ミス・キャンパスが美しいだけでなく、優しく温和だと考えていた。

「はい」 ニーナはポケットに手を差し込んだが、不意にお金を持ってこなかったことに気づいた。

恥ずかしいったらありゃしない。

ミシェルも財布が見つからないのを見て、すぐに理解したようだ。 そして、手を振ってさりげなく言った。「忘れちゃったんだったら、今度でいいわ」

ニーナはそうするほかはないと考え、同意してうなずいた。

「ところで、なんでこんな所に座り込んでいるの?」 後ろのホテルの建物を一瞥しながらそう尋ねる。

「ああ! 大変、忘れてたわ?」 額を軽く叩いて、 ミシェルはニーナと話をして、彼女の美しさにうっとりしていたせいで、そこにいる本当の目的をほとんど忘れかけていた。

そして慌てて「もう遅いわ。 私いかなくちゃ、さもないと浮気の現場を捕まえられない。 あなたはもう帰ってちょうだい、ミス・キャンパス」

浮気の現場?

彼女がこそこそ隠れて周囲を伺っていた理由はそれなのだろうか?
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