ハニー、俺の隣に戻っておいで
今しがたのジョンの唖然とした表情のことを思っただけで、勝ち誇った気分でご満悦だったのだ。

「ミス・キャンパス、大丈夫?」 ミシェルは、目の前にいるミス・キャンパスが本物ではないような気がしていた。 彼女が微笑んでいるということがすでに普通ではないのだが、今しがたやってのけたことは輪をかけて奇妙だったからだ。

ミシェルがいつもキャンパスで目にするミス・キャンパスは、滅多に微笑まず、口数の少ない優雅で気高い女性だった。

それが、どうしたことだろう。いま目の前にいる女性の浅ましいやり方ときたら。

ニーナが、自分の側に立っている人がいることにようやく気づいたのはその時だった。 彼女は自分自身を抑え込むと、「大丈夫、心配しないで。 平気よ」と答える。

「でも、どうしてそんな風に自分のおじさんを陥れたりできるの? 家に帰ったら叱られない?」 ミシェルはそのときまだ、二人が親戚であると勘違いしていたのだ。 実際、二人とも美男美女なのでありそうなことだ。

「気にしないで。 そんなことないわ」と、ニーナは微笑みながらミシェルを安心させた。 一緒に住んでいるわけでもないし、そんなことは全く問題ではない。

しかも、もう一度どこかで会うようなことがあれば、もうお互い話す必要もないのだ。

「それより、あなたは浮気の現場を押さえに来たんじゃないの? ほら、急いで」、ニーナはミシェルに何をしに来たのか思い出させると、前を歩き始めた。

「そうね、行きましょう」 ミシェルは頷き、ニーナを追いかけてスタスタ歩いて行った。 しかし、廊下の両側にある部屋の番号をチラチラ眺めてはみたものの、目的の部屋を見つけることができない。

ミシェルは途方に暮れてしまった。 彼女が覚えている限りではその部屋は20階にあるはずなのだ。

「どうして部屋が見つからないの?」 ミシェルはあたふたして立ち止まり、心配そうに周りを見回す。
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