ハニー、俺の隣に戻っておいで

ニーナはそれを見ていてついに我慢できなくなった。 「なんて言うの、その男？」

「ジェームズ・シー」ミシェルは鈍い返事をすると、そのフロアの部屋を探し続けた。 ニーナには、このまごまごと狼狽えている女の子を描写する言葉が見つからなかった。

「しばらく一人で探しててくれる？ ちょっとお手洗いに行ってくるから」

「わかったわ」

ニーナはトイレに行きたいと言ったが、言い訳に過ぎなかった。 実は、秘密の部屋を突き止めるために腕時計を使うつもりだったのだ。 そして、ものの三十秒もしないうちにジェームズのチェックイン情報を見つけ出してしまった。

ニーナが戻ってきたとき、ミシェルはまだあてずっぽうに部屋を見て回っていた。 ニーナはずいっと足を前に出すとミシェルの腕を掴み、エレベーターに向かって引きずっていく。

そして、「階が違うじゃない」とミシェルに指摘した。 彼女は抜けていたので、正しい情報を得ることすらできていなかったのだ。

ミシェルはびっくりして、 「違う階って本当？ でも、別の階にいるなんてどうしてわかったの？」と尋ねる。

「えっ、いや、何となく別の階にいる気がするだけよ」 ニーナはそっとエレベーターのボタンを押して、二つ上のフロアを目指した。

ミシェルは落ち着き払ったニーナを見ると、それがいつもの物静かで浮世離れしたミス・キャンパスと同一人物なのだと一瞬だけ感じることができた。

彼女が普通の人間のように振る舞うのは、叔父に遭遇した時だけなのだろう。

「何ぼんやりしてるの？ いくわよ」とニーナはミシェルに促すと、2241号室のドアの前に連れて行った。 そして自信ありげに眉を少し上げると、「ジェームズ・シーが予約した部屋はここよ」と言った。

「本当？ 間違いない？」 ミシェルは本当にその部屋で合っているのか疑っていた。

「信じられないって言うなら、自分で試してみたらいいじゃない」

「試すって、どうやるの？」