ハニー、俺の隣に戻っておいで
ニーナの瞳には怒りのこもった残酷さがチカチカしている。 彼女は棒を振り上げると、迷いなく全力で振り下ろすべくジョンの頭に狙いを定めた。

その時、ジョンの目には殺意がちらつく。 彼の断固とした視線に見つめられ、ニーナは芯までぐらついて思わず一歩後ずさりした。

バン!

棒はジョンの頭に振り下されると、真っ二つになった。 彼は全身がふらつくのを感じ、 痛みで壁に沿って崩れ落ちたが、それでも何とか優雅な態度を保っていた。

痛む頭をさすっているとき、 ジョンの憎しみは最高潮に達した。 そして怒りに呑まれながらも、ニーナに毒づくのを忘れなかった。

「なんて凶悪な女だ!」

まさか殴りかかってくるほど無鉄砲だとは想像もしていなかったのだ。

けれども、彼はとても恥ずかしかった。

これまでの人生で一番恥ずかしかったと言っても過言ではない。 「ニーナ・ルー!」

ジョンはニーナを一心不乱に見つめながら荒々しく唸った。

「自業自得よ!」 ニーナは彼を怖いと思ったことはなかった。 そして、ジョンが恥ずかしげもなく浮気しているのを見ると、言いようもない軽蔑を感じた。 「人妻、大学生…… どこまで恥知らずなの!」

ニーナは、この男がそんな汚いことをして平気な顔をしていられるとは思ってもみなかったのだ。
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