ハニー、俺の隣に戻っておいで
ミシェルの世界では食べることが全てを解決してしまうらしい。

初め、ニーナはミシェルがあまりに喋るので閉口していた。 それはとどまることのない言葉の集中砲火だったからだ。
けれどもニーナもそのうち慣れてきて、実を言えば、ミシェルが言わずにはいられないことを聞くのにちょっと興味が湧いてきていた。

一方、ミシェルは彼女にニーニと言うあだ名をつけて呼び始めたのだった。

ある日、ミシェルは教室の外でニーナを待っていて、 授業が終わるとニーナの腕を親しげに握り「ニーニ、今日は食堂に行ってお昼を食べよう」と笑顔で言った。

「どんな新しい料理があるかな?」
ニーナはミシェルが何を考えているかいつもわかっていた。

「おいしいものがたくさん。 一緒に来てくれる?奢ってあげるよ」
ミシェルは嬉しそうな表情で食事券をひらひらさせる。もうだいぶ前から知り合いなので、ミシェルはニーナをどうやって丸め込めば頷いてくれるか知っていた。
彼女が甘やかされた子供のように振る舞うたびに、ニーナは同意せざるを得ないのだ。

けれどもミシェルは、二人でどこかに食べに行くたびにニーナがあまり食べていないことに気づいていた。
そして、それはニーナがお金を節約しようとしているからだろうと考え、いつも夕食を奢ってあげた。

ニーナはミシェルの熱意を断るのが苦手だった。 そして、将来なんらかの形でお返しできればいいと思っていた。

ところが、今日のお昼はいつもとは違う何かが起ころうとしていた。 なんとジェームズと出くわしたのだ。

女学生の集団の前で食事をすることはすでにジェームズの日常の一部になっていた。
彼は女の子みんなの注目の的になるのが大好きで、彼の取り巻き連中もエゴを満足させる道具でしかなかった。もちろん今日も例外ではない。

「ミスキャンパスのニーナじゃないか? なんで最近よく食堂に来るんだ?」
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