迷いの森の仮面夫婦

その日俺は初めて雪穂の友人である西松 愛莉から全ての真実を聞いたのだ。
彼女の一途すぎるほど真っ直ぐな想いと、俺への本当の愛情を痛いほど知る事になる。
彼女の話しと、先ほどしてくれた凪咲の話が繋がっていく。

初めて実家で出会った幼い頃の話。 病院で再会して、ラスベガスで偶然の一夜を過ごした。
お互いに愛さない事を決めて、結婚をした。

仕組まれていた事なんて、夢にも思わなかった。 不思議と不快感はない。寧ろ雪穂を苦しませ続けてきた事を思えば胸が痛む。

そして彼女は、こんな俺の事をずっと好きでいてくれたんだ。 どうしてそんな事さえ夢にも思わなかったんだろう。少し考えれば分かる事だろう。
 
いつも彼女が俺の為にどれだけ一生懸命だったか。曇りのなき愛情を出し惜しみさえしなかった。

全てを話し終えた後西松さんは「雪穂に悪気があったわけではなくて」と言った。
そして「雪穂は本当にあなたの事が好きだったから」と。

思う所は何度もあった。俺の為にどうしてあんなに一生懸命だったかとか、何気ない触れ合いの中でひしひしと彼女の愛情を感じていた。
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