迷いの森の仮面夫婦

顔を半分ベールで覆って、金髪のかつらまでつけているのは身バレ防止の為らしい。

だから愛莉の可愛らしい顔は、目元しか見えない。 だけど私の言葉に気を悪くしているのは目元を見ればすぐに分かる。

「あんたって本当に変わってる……
本来であるならば運命めいたものが大好きじゃなきゃ小さい頃に一度会った初恋の人を今でも想い続けてられないよ…。
雪穂みたいな夢見がちなタイプの人の為に占いはあるのに」

「だってさあ、占いを信じて行動して全員の願いが叶うなら皆占いに縋り付きたくもなるよ。
私は確実に海鳳さんを振り向かせたいの!
だから、計画的に着々と準備を進めたいんだけど…海鳳さんって何年病院で観察してても掴みどころがない人っていうか、隙がないんだよね。
それに、占いなんて不確かな物に縋る人の気持ちはまるで分かんない…」

ふっと愛莉の目元が緩んだのが分かった。 これは呆れられているに違いない。

中学時代から頻繁に初恋の人の名前を出して夢ばかり見ていた私を、いつだって生暖かい目で見つめていた。

互いに二十歳で上京してきて、海鳳と偶然再会した時の話をした時はさすがの愛莉も驚いてはいたけれど……
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