言いましたが、 違います‼︎


準備を整えて、慎太郎の元へ戻ると、慎太郎もほんの少しだけいつもよりオシャレな格好をしていた。

どうせ汚すのに

そう思っても、洗うのも着替えさせるもの私ではないので、グッと言葉を飲み込んだ。

「せっかくいい天気だから、洗濯したかったなぁ」と呟けば、
「今週ずっといい天気だから明日やっとくよ」
と言われ

「どこに向かってるの?」と聞けば、
「着いてからのお楽しみ」と楽しそうにいう。


のらりくらりと行き先をはぐらかしていても、「ちょっと待ってて」と名の知れた和菓子屋に立ち寄れば、大体の想像がつく。

だったら、初めから言ってよ!
心の準備ってものがあるんだから!

永太郎を責めれば、「断られるかと思って」と少しバツの悪そうな顔をした。

「一緒に来て下さい、美紗都様。って土下座してお願いすれば、考えない事もないわよ」
「土下座すればお願い事聞いてくれるんだ‼︎いい事聞いた」
「考えるって言っただけで、やるなんて一言も言ってないでしょ‼︎」

なんていつものくだらない会話をしているうちに、目的地に着いた。


コインパーキングに停めると、永太郎は慎太郎を抱き抱え、買った手土産に手を伸ばす。

「これぐらい持つわよ」と永太郎より先に手土産を持つ。

「じゃぁ、行こうか」

永太郎は覚悟を決めたと言わんばかりに歩き出す。

一軒家の家の前で、足を止める。

私はただ黙って、永太郎を見守るつもりだった。
だったのだが、そこから動かない。

< 74 / 124 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop