政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
フランスパンはパリパリだし、ローストチキンはジューシーだ。
某チェーンのサンドイッチ店より、断然こちらの方が美味しい。

私に料理を出し、メイドさんは下がった。
前はずっと傍について給仕をしてくれたが、用があるときに呼ぶからいいと言ってある。

「ごちそうさまでした、と」

今日も美味しい昼食を堪能させてもらった。
これでまた、頑張れそうだ。

キッチンへ行き、メイドさんに声をかける。

「ごちそうさまでした、美味しかったです」

「お粗末様でございました」

今度は私と入れ違いに、メイドさんがダイニングへ向かう。
本当はお皿くらいは下げたいのだが、何度やっても毎回恐縮されてしまうので諦めた。

部屋に戻り、再び縫いかけのドレスと向かいあう。

「うーん、なにがダメなんだろうな……?」

結婚式まであと四ヶ月ほど。
それまでに完成させなければいけないが、前途多難だ。

零士さんと結婚して三ヶ月と少し過ぎた。
相変わらず彼は多忙で、月にトータル一週間も家にいない。
その一週間も全部が休日というわけではなく、帰ってくるのが夜遅いなんて珍しくもなかった。

『労働基準法違反です!』

なんて働き過ぎを抗議したものの。
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