政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「この部屋で過ごすのも、今日が最後か」

改めて部屋の中を見渡した。
大学入学と同時にこの部屋でひとり暮らしをはじめ、六年三ヶ月。
初めての料理でフライパンから火柱が上がり、消火器を使用して真っ白になった部屋を泣きながら掃除したのも懐かしい思い出だ。
まだ引っ越し作業で何度か来るだろうが、ここでの生活は今日までだ。

明日は朝早く実家に行かなければならないので、名残惜しいがお風呂に入ってあまり遅くならないうちに寝た。
明日のお見合い、いい人だったらいいな……。



翌日、ここでの最後の朝ごはんを作って食べ、予定の時間に迎えに来た車で実家へ帰った。

「ただいま」

「おかえりなさい」

安いTシャツにジーンズ、無造作ひとつ結びの私を気にすることなく、母はにこやかに迎えてくれた。

「朝食は食べたの?」

「食べてきたー」

リビングでは私に気づいた父が、見ていたタブレットをテーブルの上に置く。

「ただいま、お父様。
今までの自由を、ありがとうございます」

「十分楽しめたか?」

私を見る父の目は、少し不安そうだ。
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