政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
女性はなにを聞かれているのかわからないといったように、何度かぱちぱちとまばたきをした。

「はい……?」

私もわからなくて彼女と顔を見あわせ、同じようにまばたきをする。
まさか、忖度……はないよね?
「先にいただいたデザイン画を元に、社内で事前協議を行いました。
クラッシックラインのブランドは当社にはありませんし、面白いです。
実績も問題ありませんし、プレ企画で反応を見てみてそれから本格始動……と社長にお伝えしていたのですが、聞いてないですが?」

「え、えーっと……。
はははっ」

とりあえず笑って誤魔化した。
それでこのあいだ出ていくとき、零士さんはなんか意味深に笑っていたわけだ。

「お仕事の話はここまで……といっても、こちらもブランドイメージになるわけですから、仕事には変わりないんですが」

休憩する暇もなく、次へと移る。

「ウェディングドレス試着、しましょうか」

「よろしくお願いします!」

勢いよく頭を下げて、準備に移る。
仮縫いドレスの調整を誰に頼むか零士さんに相談した結果、会社の方がしてくださることになった。
仕事中にこんな私的なお願いをしてもいいのか気になったが、これもきちんと仕事として取り扱って業務に支障がないようにするし、それにブランドイメージになるんだから仕事だろ、と零士さんは言ってくれてほっとした。

準備されたパーティションの向こうで着替える。
本当はモデルさんと同じく、男性がいようとその辺で着替えるつもりだった。
今までも仕事ではそれが普通だったし。
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