政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
でも、俺が鞠子に報復すれば、清華は自分のせいだって悲しむんだろうな。
俺の愛する女はそういう人間だ。

「清華に免じて今日のところは許してやる。
ただし、最大限の誠意は見せろ」

「はいぃぃぃっ!
寛大なご処置、ありがとうございます……!」

また久礼が畳に額を押しつける。
寛大?
誰がだ。

「キサマは感謝する相手を間違っている」

「は?」

「帰る」

わけがわかっていない久礼を無視して屋敷を出る。
きっとこれで久礼は勝手に自滅するだろう。
溜飲が下がったわけではないが、これ以上はもういい。
それにこの狭い世界、あっというまに話は広がる。
必然、鞠子は報いを受けることになる。

「清華のおかげで命拾いしたんだ、感謝しろ」

ぼーっと流れていく窓の外を眺めた。
鞠子も、あの古手川とかいう男も、清華を傷つけたヤツは死ねばいい。
でもそれだと……清華が悲しむ。
俺は清華を泣かせたくないのだ。
だから、清華の願いは叶えてやる。
ただし、清華に救われた恩を忘れるヤツは今度こそ……滅ぼす。

「ただいま」

眠る清華の目尻に涙が溜まっていた。
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