政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「……え?」

開けられた部屋の中はまるで勤めていた会社の、作業ルームのようだった。

「これって……?」

置いてあるのは工業用ミシンだし、作業テーブルは広くて使いやすそうだ。
トルソーもいくつかある。

「清華は自分で、ウェディングドレスを作るんだろ?
なら、作業部屋は必要だ」

それはそうだが、その話をしたのはほんの数日前。
それから用意したとか?
それにしては設備が整いすぎている。

「私は服作りを、続けていいんですか……?」

この部屋は、そうだとしか思えない。

「清華のやりたいことはなんでも実現させてやる」

パリへ向かう飛行機の中で、確かに零士さんはそんなことを言っていた。
でも、本当に?

「それに、清華の夢は自分のブランドを立ち上げることなんだろ?
ならその夢を追いかけられるようにサポートするのが、俺の務めだ」

私を見る、レンズの向こうの目に冗談や嘘はない。

「ありがとうございます」

零士さんがこんなに、私の夢を応援してくれるだなんて思わなかった。
これなら、想定していたよりもずっと早く、計画が進められるかもしれない。
でも、こんなに恵まれていていいのかな……?
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