今さら好きだと言いだせない
「町宮はグラフとか得意そうだな。頼んでみるか……」

「町宮だって忙しいんですから。自分でやってくださいよ」


 眼鏡の奥の瞳が下心でいっぱいだと物語っている。
 俺のような少し鋭い人間からすれば、そんなのは一目瞭然なのだが、鈍感な町宮はこのときはまだわかっていなかった。
 無防備に、高木さんを善良な先輩だと信じているようだ。

 狙われてるんだからもっと警戒しろよ、と町宮を見ていると心配になってくる。


「芹沢は俺に冷たいなぁ」

「え、普通ですけど」


 これでも普通にしているつもりだ。職場の先輩だから仕方なく。
 どうやら高木さんも俺が気に食わないようだから、本当なら極力接しないのが一番なのだが、仕事上そういうわけにもいかない。


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