アンドロイド・ニューワールド
第一印象は、これから集団生活を行う上で、とても大切です。

ましてや、私は転入生。

新学期から入学していれば、クラスメイトはお互い初対面ですが。

現状このクラスの皆さんは、お互い顔見知り同士で、ある程度この集団に溶け込んでいる仲です。

そんな中、私という新参者が受け入れられるかどうかは。

この、第一印象に懸かっていると言っても、過言ではないでしょう。

そんな訳なので、私は色々な自己紹介のパターンを考えてきました。

まず、ここは敢えて道化を演じ、笑いを誘うことで、「この人面白いなぁ」と思わせ、好感度を上げるという手段。

しかし、この手段は、残念ながら却下しました。

何故かと言いますと、上手く行かなかったときのリスク…。

つまりは、スベってしまったときのリスクを考慮してのことです。

以前研究所にて、久露花局長が、他の局員達のいる前で、

「秋だね〜、紅葉が綺麗だね。…あっ、そうだ。紅葉見に行こうよう!」などという、掛け言葉を利用した、所謂親父ギャグを披露したところ。

あのとき研究室では、まだ秋だったというのに、さながら極寒地にいるかのような空気になりました。

人間は、うっかりつまらない親父ギャグを言うと、どんな真夏の暑さも、凍死するほどの寒さに変えることが出来るのだと、あのとき理解しました。

よって。

私は「この人、頭おかしいんじゃないか?」と思われるかもしれないリスクを回避し。

ここは無難に、「この人はまともな人だ」と判断されるであろう、まともな自己紹介を披露することにしました。

何だかエンターテインメント性に欠けますが、スベるよりはマシでしょう。

ましてや私は、漫才師ではありませんから。

そしてこのときの為に私は、ちゃんと自己紹介の定型文を考えてきました。

「皆さん、初めまして。『Neo Sanctus Floralia』から来ました、『新世界アンドロイド』形式番号1027番、久露花瑠璃華と言います」

と、私は言いました。

まずは所属と素性を明らかにする。自己紹介の基本です。

更に、自己紹介は続きます。

「人間の中に混じって、人間の感情を知る、『人間交流プログラム』遂行の為、ここに来ました。不束者ですが、皆さん、ご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い致します」

と、私は言いました。

更に、ぺこりと頭を下げました。

どうでしょう。

一晩考え抜いた、素晴らしい自己紹介だったと思います。
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