アンドロイド・ニューワールド
…そして、この完璧なる自己紹介のお陰で。

朝のホームルームが終わるなり、私から話しかけずとも、クラスメイトがわらわらと、私の周りを取り囲みました。

とても人気者です。

これは良い傾向です。クラスに受け入れられたと認識すべきでしょう。

最初に話しかけてきたのは、私の後ろに座っていた女子生徒。

名札がないので名前は分かりませんが、顔は記憶しました。

「ねぇ、久露花さん、だっけ?」

「はい、私のことでしょうか?」

と、私は聞きました。

このクラスに「久露花」という名字の生徒が、私以外にもいるかもしれないので、確認です。

かなり珍しい名字だと認識しているので、なかなか同姓の人はいないと思いますが。

人生、何があるかは分からないもの。

もしかしたら、偶然このクラスには、「久露花」姓の生徒が複数いる可能性があります。

しかし。

「あなたのことだけど…」

と、後ろの席の女子生徒は言いました。

良かった。私のことのようです。

「何でしょうか?」

「さっきの自己紹介って、ギャグなの?」

と、後ろの席の女子生徒は聞きました。

何故か半笑い状態です。

誠に遺憾です。人と(私はアンドロイドですが)話をするときに、半分笑いながら喋るとは。 

お世辞にも、品が良いとは思えません。

育ちの悪さが伺えます。

しかし、世の中には様々な人間がいます。

半笑いで人と話すのが癖になっている、悪癖持ちの人間もいるでしょう。

久露花局長だって、糖分を摂取しなければやる気が出ないという、謎癖を持っていることですし。

…それにしても、と、私は先程後ろの席の女子生徒に言われた言葉を、頭の中で反芻してみました。

先程私は、「さっきの自己紹介はギャグなのか」と聞かれました。

質問の意図が分かりません。

「申し訳ありませんが、質問の意味が分かりません」

「さっき言ってたじゃん。何だっけ?ネオなんとかって」

「『Neo Sanctus Floralia』のことですか?」

と、私は聞きました。

確かに、一度で覚えるには長ったらしい名前かもしれません。

私は一度で覚えられますが。

「そうそう、それ。何処にあるのー?それ」

と、後ろの席の女子生徒は、相変わらずのにやにや半笑いで聞きました。

『Neo Sanctus Floralia』の所在地を知りたいようです。

ここから遠く離れてはいませんが、しかし『Neo Sanctus Floralia』の所在地については、民間人に伝えてはいけない情報です。

「申し訳ありませんが、それは教えることが出来ません」

と、私は答えました。

「えー?何で?」

「機密事項だからです」

「…ぷっ…」

と、後ろの席の女子生徒は吹き出して笑っていました。

同時に、私を取り囲んでいるクラスメイトも、笑いを堪えきれないという風に吹き出していました。

…なんということでしょう。

私を中心に、笑顔の輪が広がっています。

『人間交流プログラム』は、早くも成功していると言って良いのではないでしょうか。
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