アンドロイド・ニューワールド
その日は、それでお開きになりました。

コーヒー代は、生徒会長が支払ってくれました。

これも、男のプライドというものなのでしょうか。

分かりません。聞く相手は、もういませんから。

そして。

家まで送るよ、という生徒会長の誘いを断り。

私は喫茶店の前で、生徒会長と別れました。

別に、自宅を知られるのが嫌だった訳ではありません。

ただ、さっきからずっとそこで「見ている」人物に、話があっただけです。

私はしばらく歩いて、人気のない路地裏に入りました。

そして、周囲に誰もいないことを確認して、立ち止まりました。

「…どうぞ、出てきても良いですよ。いるんでしょう?」

と、私は言いました。

すると。

予想通り、何もなかったはずの空間に、突如として現れる人影がありました。

以前と、同じ手口ですね。

『Neo Sanctus Floralia』第2局所属、1110番『アロンダイト』。

今は、紺奈碧衣さんでしたか。

「ちなみに、いつから気づいてました?」

と、碧衣さんは聞きました。

「学校から出て、生徒会長と喫茶店に入った辺りからですね」

「え、割と最初からバレてたってことですか?あなたの学習能力どうなってるんですか」

と、碧衣さんは言いました。

私の学習能力は、本当に高いのでしょうか?

まだ、自分の胸の奥の、喪失感の正体すら分からないのに。

「しかしまぁ、紺奈局長の様子が変だから、これは何かあったと思って色々探ってたら、あなたのことだったんですね」

と、碧衣さんは言いました。

「どういう意味ですか?紺奈局長と私と、何の関係が?」

と、私は聞きました。

何故、紺奈局長が関わってくるんですか?

もしかして、恋人が出来たことを、久露花局長が紺奈局長に報告したのでしょうか?

充分有り得ることです。

第4局は、お互い『人間交流プログラム』を行っている『新世界アンドロイド』を持つ局として、第2局とは密に連絡を取り合っているそうですし。

別に知られても構いませんが…。

で、それを何故、碧衣さんが知っているのでしょうか?

紺奈局長は、あまりこのようなことを、べらべら碧衣さんに話すとは思えないのですが。

「別に直接関係はないですが、僕が先日、日課である紺奈局長との通信をしたとき…」

と、碧衣さんは言いました。

え?定期連絡って、基本的には週一では?

日課?

「何だか紺奈局長の様子が、いつもと違うなーって思って。いつもなら、きっちり10分で終わる通信が、なんと僅か9分12秒で終わってしまいました。これはただ事ではないと思いませんか?」

「思いませんね」

「そうですか。変わってますね」

と、碧衣さんは言いました。
< 324 / 345 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop