傾国の姫君
男はじーっと、私を見ている。

「家族を、夫と子供を、秦王に殺された。」

すると、フッと男は笑った。

「よかろう。俺に着いて来い。」

そう言って男はまた、歩き出した。

私はまた石階段を昇り、男に着いて行く。


やっと石階段を昇り切ったところに、小さな道場があった。

「へえ。こんなところに、道場が。何の道場なの?」

「入ってみるか?」

言われるがままに、道場に足を踏み入れた私は驚いた。

壁には一面、剣が飾られていたからだ。

「剣術?」

「まあ、見てろ。」

男は壁から剣を二つ取ると、道場の中央に立った。

そして音楽もなしに、踊り始めた。

剣がシャランと音を立てる。

剣を扇のように見立てて、男は舞っていた。

それは、恐ろしいというよりは、芸術に近いモノだった。
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