おどおど姫と甘い恋♡
……ライバル。
なんて、ななちゃんの彼氏相手に、俺ごときが思っていいわけがない。
全然、まともに話したこともないけど、大事な友達の弟、だし。
合った目を逸らせないのは……友達の弟、だから?
それとも、……ほんとは絶対に、負けたくないから?
友達の弟の彼女に恋してる俺は、……この先、なにを望んでるんだろう。
奪って、自分のものにして、……友達の弟を、傷つける。
それが俺の、望むこと?
そのために俺は、諦めるのをやめた?
『恋は仕勝ち』
本当にそれが、正しいのか。
弟を前にして、分からなくなる……
「大原先輩、って、」
「…?」
「彼女、いるんですか?」
「……。」
なんで、そんなことを聞いてくんのか。
それはなにかに、勘づいてるから。
俺の気持ちに、……気づいてるから?
「なにお前、大ちゃんに興味あんの?」
「あ、いや、」
菊が不思議そうに弟を見てるけど、違う。
こいつが興味あんのは、俺じゃない。
俺の気持ちが向かう先の、あの子。
興味あんのは、……俺と同じ。
ななちゃん、でしょ?
「、…」
「…、」
多分、俺ら2人にしかわかんない、微妙な空気が流れてる。
なんも言えない俺と、なんも言えなくなって黙り込む弟。
「よし、そろそろプリント作るか」
「あ、うん」
他のやつらには絶対に分からない微妙な空気を、菊が自然と終わらせてくれた。