若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
渡瀬先輩は高校の時の先輩で、蓮さんを巡って色々あったため、正直あまり会いたくない存在である。
そして、そう思っているのは私だけでなく先輩も同じだというのは、時折私に向ける攻撃的な視線から分かる。
「先日も蓮君と一緒に食事をして、その時、彼自ら和菓子の新作を考えてるって聞きました」
「え、えぇ。そうなのよ。あぁでもない、こうでもないって頑張ってるわ」
渡瀬先輩が女将さんに話を切り出し、女将さんが私に気遣うような眼差しを向けた。
私と暮らし始めてから一度もないというのに、渡瀬先輩とは何度も食事をしているらしい。
やっぱり蓮さんにとって彼女は特別なんだと思い知らされれば、一緒に食事ができるかもと喜んでいた自分が、急に滑稽に思えてきて、切なさで胸が締め付けられる。
「それで、前にも彼が考案したものがあるって教えてくれて、食べてみたいのですけど、それってどれですか?」
渡瀬先輩からの目を輝かせての質問に、「えっと、それでしたら」と女将さんは歯切れ悪く答えた。
渡瀬先輩の希望の物は、今まさに私が買おうとしていた物である。しかも一つしか残っていないため、あらどうしましょうと困っているのが女将さんの表情に出ている。