若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~


「いらっしゃいませ。……あら、もしかして渡瀬さんとこの」


客の来店に素早く反応した女将さんが、いまいち確信の持てない様子で呟き、私はドキリとして振り返る。

すぐに視界に捕らえた女性の姿に息をのみ、「渡瀬先輩だ」と心の中で苦々しく呟いた。

ほぼ同じなのは身長と髪の長さくらいで、その他は私と真逆をいっている。

気の強さを感じられる目元、真っ赤な口紅、それから襟口の広い服に豊満な胸元、足の細さが際立つような短めのスカート、ヒールの高い靴へと順に目がいく。

彼女と比べたら、化粧も服装も体型もすべてが地味に思えてきて、敗北感すら覚えてしまうほど。


「えぇ、そうです。私のことを覚えていてくださったんですね、嬉しいです」


渡瀬先輩は女将さんに対して嬉しそうに顔を綻ばせていたけれど、ショーケースの前にいる私に気が付いた途端、わずかに眉を寄せた。


「富谷さんもいたのね。久しぶり、元気だった?」

「先輩、ご無沙汰しています。はい、相変わらず元気でやってます」


緊張しながら答えると、渡瀬先輩は大して興味がないこと分かるほど素っ気なく「そう」と呟き、早々に視線を女将さんへ戻し、楽しそうに世間話を始める。

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