若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~

追い払ったはずの姿が再び脳裏に舞い戻ってくる。

想像の中でふたりの距離が近づけば、蓮さんが渡瀬先輩をベッドへ押し倒す所まで想像してしまい、私はぶんぶんと頭を横にふって邪念を必死に追い払う。

仮にそうだったとしても、私には何か言う資格は無い。

所詮、私と蓮さんは偽りの関係でしかないのだから。


「お風呂でも入って心も体もスッキリしよう」


考えていても暗くなるだけ。

気分を変えようと勢いよく立ち上がったところで、ガチャリと玄関の戸が開いた音がした。

不思議に思って廊下に通じているドアへ目を向けると、ほどなくして蓮さんがリビングに入ってくる。


「お帰りなさい」

「ただいま……どうかしたのか?」

「え? お、お風呂に入ろうかなって」


驚き顔で突っ立っていたため、蓮さんに不思議そうな顔をされてしまった。

まだ帰宅しないだろうと思っていましたとは言えるはずもなく、たどたどしく別の理由を絞り出す。

「先に入りますか?」と聞くと、彼は「いや」と首を横に振りつつ私の前に立つ。


「これを」


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