若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~

差し出されたのはヤツシロと書かれた紙袋。ダイニングテーブルの上の、数時間前に購入した最中が入った同じ紙袋へと交互に視線を向ける。

よく分からないままに受け取ってから中身を見て、「あっ!」と小さく声を発する。

慌ててダイニングテーブルへと移動し、紙袋の中から両手でそっと取り出したのは練り切りだった。私が買えなかった花のものふたつと、兎の形をした可愛らしいものがひとつ。


「兎だ! とっても可愛い! しかもお花のもある」

「母さんから聞いたんだ。富谷が店に来ていたのは、最中ではなく本当はこっちを買うためだったって」


自分の隣に並んだ蓮さんを笑顔で見上げてから、私は僅かに首を傾げた。


「渡瀬先輩、結局買わなかったんですか? あ、でも確か、あの時一つしかなかったような」

「これは本店に置いてあったものじゃない。新店舗の方でも扱い始めたのを思い出して、確認したらまだ残ってたから帰りがけに寄ってきたんだ」

「そうだったんですか。疲れてるのに、ありがとうございます」


私のために時間を使ってくれたのに、つまらないことで嫉妬していた自分が情けなくなる。

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