先輩の好きな相手は俺じゃない
「先輩、授業お疲れ様です」



「うん! シンくんもお疲れ様!」





 俺の先輩は今日も少しお疲れ気味みたい。

 先輩が受験生で勉強熱心なのはわかるけど、

 俺からしてみれば、もう少し身体を大切にしてほしいと思う。





「……先輩、体調に気をつけて」


「うん! 心配してくれてありがとう!」





 先輩の笑顔が可愛すぎる。

 破壊力が……。





「うえぇ」



「えっ、シンくん!?

 今絶対に人類がしちゃいけない声が聞こえたんだけど……」



「先輩のせいですから」



「えっ!? 私、なんかやっちゃった!?」



「はい(可愛いは罪……)」



「えっ、ごめん……」



「取り敢えず、今日は勉強にあまり力を入れない事」



「お母さんだ……!」



「返事は?」



「……はい」





 本当に、体調を崩されたら困るのは俺なんですから。

 ……俺の理性を抑えるのに。





「今日も送ってくれてありがとね!」



「いえ……」



「シンくんも体調気をつけて!」



「はい」





 本当に勉強を控えてくださいよ。

 昨日なんて、深夜の2時34分27秒までぶっ通しだったんですから。





 盗聴器も、監視カメラも、無事起動している。





「ふぁぁぁ、授業疲れたぁ……」

「あっ! プリンの時間!」





 先輩、プリンを目の前に目がキラキラしてる、

 本当に可愛い。

 食べる姿もリスみたいで可愛い。





「ごちそーさま!」

「さてさてっ、お勉強の時間だよッ!」





「あれ、

 そういえばシンくんにあんまりすんなって言われてたっけ?

 ま、いっか」





 ……良くないです。





「……私もレイ先輩と同じ学校に行く為に、

 頑張らなきゃ!」





 また、レイ先輩か。

 先輩の好きな人。

 ……あいつが先輩に釣り合うわけないのに。

 俺もレイ先輩の隣に並ぶのは難しいと自重しているのに。





 先輩は引き出しから必勝ハチマキを取り出して、先輩のおでこに縛る。





「よし!」





 先輩、勉強始めちゃったか。

 熱心な先輩が好きだけど、頑張りすぎるのはあまり良くない気がする。

 ……俺に止める権利はないが。
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