気づけば君が近くにいてくれた



息苦しいマスクを雑に外し、近くに置いてあったヘアピンで長くて邪魔な前髪も上にあげて留めた。


ひとりでいる時間が1番落ち着く。


ずっとできていなかった深呼吸をベッドの上で数回繰り返した。


全速力で走った後のようにうるさく鳴り続けていた心臓の鼓動は、ようやく治まってきた。


よし、制服を脱ごう。


初めてこの制服に袖を通した時、少しはわくわくする気持ちもあったけれど、今は全く無いどころかさっきの出来事を思い出してドクンと胸が嫌な音を立てる。



……早く忘れなきゃ。



激しく首を横に振って、制服のブレザーのボタンに手をかけた時だった。


スマホのバイブが鳴り、制服のポケットに入れたままだったことに気がついた。


誰からだろう。


そんな疑問を抱いても、あの人か興味のない広告メールかのどちらかなんだけど……多分。



「アオイさん」



アオイさんというのは、私が不登校になってからSNSで出会った同い年の人。


友達と言ってもいいのかはわからないけれど、今の私が唯一連絡を取り合っている人だ。


制服を脱いで楽なルームウェアに着替えてからベッドの縁に座り、もう一度スマホを開く。






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