合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
出会い(五)
気に入っていた。すでに過去形だ。母のその言葉に、男性の顔色がみるみる蒼白になっていくのが分かる。この人はどちらが上客なのか、きちんと分かっているのだ。他の若い店員が彼女たちの元へ行ったものの、興奮しいているのか、まだ騒いでいる。
「……あのお方のお連れ様だから、許可したものを……」
下を向き、ぶつぶつ独り言を繰り返す。こうなると、少し気の毒に思えてきた。
「こらこら、どうしたんだい? 小猫ちゃんたち」
階段をゆったりと男が上がってきた。
彼女たちの連れの男だ。店員を押しのけ、私を指さしながらワーワーと女たちは何か文句を言っている。
私たちのところにいたオーナーが、うんざりしたような顔を一瞬した後、すぐに笑顔を取り繕う。
「キース様、さすがに騒ぎを起こされるとこちらも困ってしまいます」
キースと言われた男はこちらをちらっと見た。
金よりの茶色い髪に、夜明けを思わす茜色の瞳。瞳の色と同じ服には、細やかな金の刺繍が施されている。
金持ちの上級貴族の次男か三男といったところだろうか。
元々、あまり夜会などに参加しない私には誰かまでは分からないが、身分がそれほど低くないことは分かる。
それにしても、ジロジロ見るなんて失礼すぎる。まだ文句を言うつもりかしら。
構えていると、そのままこちらに近寄ってくる。
「うちに子たちが迷惑をかけたようだ。気分を悪くさせてしまって申し訳ない」
「……あのお方のお連れ様だから、許可したものを……」
下を向き、ぶつぶつ独り言を繰り返す。こうなると、少し気の毒に思えてきた。
「こらこら、どうしたんだい? 小猫ちゃんたち」
階段をゆったりと男が上がってきた。
彼女たちの連れの男だ。店員を押しのけ、私を指さしながらワーワーと女たちは何か文句を言っている。
私たちのところにいたオーナーが、うんざりしたような顔を一瞬した後、すぐに笑顔を取り繕う。
「キース様、さすがに騒ぎを起こされるとこちらも困ってしまいます」
キースと言われた男はこちらをちらっと見た。
金よりの茶色い髪に、夜明けを思わす茜色の瞳。瞳の色と同じ服には、細やかな金の刺繍が施されている。
金持ちの上級貴族の次男か三男といったところだろうか。
元々、あまり夜会などに参加しない私には誰かまでは分からないが、身分がそれほど低くないことは分かる。
それにしても、ジロジロ見るなんて失礼すぎる。まだ文句を言うつもりかしら。
構えていると、そのままこちらに近寄ってくる。
「うちに子たちが迷惑をかけたようだ。気分を悪くさせてしまって申し訳ない」