廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「そうねぇ。暗殺をどうやって生き延びたのか……確かに興味が湧くわね。アルカディアや東の方の情報は、レグナントにはあまり入って来なかったから」

「どうして情報が入らなかったのでしょうか?」

私の問いに答えたのはダリオンだった。

「それどころではなかったからな。こちらはこちらで、国境付近での小競合いが多かった。あの頃、遠くはなれた東方まで見ている余裕は無かったのだ」

「そうだったのですね」

レグナントも一昔前は、争いの渦中にいた。
多数の小競合いを最小限の犠牲、かつ最短で制圧したのはダリオンだ。
レグナント付近の争いは、彼の活躍により沈静化したのである。

「ユグリス殿下なら何か知っているかもしれない。東方に赴いたり、情報を集めていたのは殿下だけだったからな」

「同感ね。殿下はいつも腹に何か抱えている。晩餐会でもそんな気がしたわ」

おばあ様とダリオンは顔を見合わせた。
普段、全く反りが合わない二人だけど、考えることは一緒である。

「でも、そんなつまらない話、今すべきではないわ。今日は待ちに待った観劇の日なのだから、全て忘れて楽しまなくてはね!そうでしょう、ルキア?」

「はいっ!」

話題を変えたおばあ様に、私も同意した。
キナ臭い隠し事の話は、観劇の後で、だ。
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