廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「そうだったのですね。すみません、つらい話をさせてしまって」

「別につらくはない」

「それは、なにも感じないから、ですか?」

私は戸惑いつつ尋ねた。
ダリオンが、まだ深い悲しみの霧に呑み込まれているのかと思うと、胸が張り裂けそうだったから。

「違う。お前のお陰だ」

「え?」

「王宮で、お前は骨が折れているにもかかわらず、泣き叫ばなかった。誰にも助けを求めず誇り高く敵を睨んでいた。誉められた行為ではないが、その姿は……あの時の私とよく似ていたのだ」

「あの時って、葬儀の時のダリオン様でしょうか?」

当主としてのプライドで泣かなかったダリオンと、エスカーダ家の名誉のために泣くもんかと誓った私。
私たちが似ている?

「そうだ。お前がエスカーダ家の名誉を守ろうと戦う姿はあの日の私だ。そう思った瞬間……なんていうか……その……」

「その?」

「うーん……なんと言えばいいのか……」

大英雄が首を傾げ、唸り始めたので、私はなんとなく思い付く言葉を挙げてみた。

「えーと、もしかして、同士とか仲間とか……そのような感じでしょうか?」

「ああ、そう、それだ。あの瞬間、お前に対する気持ちが変わったのだ。この子は、私の嫌悪する奴らとは別の人種だと」

「あ、ありがとうございます」

私の無謀な行為が、ダリオンには好意的に捉えられていたなんて。
人生、なにが原因でいい方に転がるか、わからないものよね。
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