堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 エレオノーラは変装のことを『演じる』と表現する。それは昔取った杵柄に関係するものだ。その昔とはエレオノーラがエレオノーラとして生まれる前の話。前世なのかそれよりも前世なのか、とにかく昔の記憶。
 地球の日本という国の女子高生と呼ばれる頃の記憶。その女子高生は演劇部だった。某歌劇団を目指していたけれど、見事に惨敗。それでも高校の演劇部では様々な役を演じることができた。その後も劇団に入り、役者としての一生を終えた。
 そのとき、役になりきるときに流行ったのが、その役の『仮面をつける』という表現。だからエレオノーラは今でも潜入捜査のときには『仮面をつける』

 と、そんな大昔の記憶を掘り起こしながら、パメラに揉み揉みとされていると、気持ちがよくてついつい意識を失ってしまいそうになる。白目を向きそうになる。あげている頭が自然と落ちていくことに、パメラも気付いたのだろう。

「お嬢様。眠ってしまわれてもかまいませんよ」

 パメラが優しすぎるので、幾度となく意識を手放しそうになった。多分、白目を向いて、意識を失いかけた四度目のときだったと思う。
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