堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 この下着姿であるエレオノーラが、先ほどの男性店員に化けたエレオノーラと同一人物であると誰が思うだろうか。

 否。

 エレオノーラのその髪は金色に輝き緩やかにウェーブがかかっている。体格もそれなりにスレンダーで、出ているところもそれなりに出ていた。黙っていれば女神、と形容してくれるのは、兄バカの兄たち。そう、それはまるで豊穣の女神である、と。ただし、兄バカの兄たちによる言葉であるため、その言葉の真偽については協議する必要もあるとかないとか。
 しかし、先ほどの変装はどこからどう見ても高級酒場の男性店員だった。出ているところもうまく隠し、長い髪もうまく隠し。どこからどう見ても男だった。声色ももちろん。

「本当にお嬢様の変装には、毎回驚かされます。外見はもちろんですが、声色なども変わっていて、私でさえも見分けがつきません」

 エレオノーラのふくらはぎをもみもみっと揉みながらパメラは言った。

「あら、それは演じる者にとって最高の誉め言葉ね」

< 9 / 528 >

この作品をシェア

pagetop