堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「呼び方?」

「騎士団の任務では無いのだから、団長と呼ばれるのは少し」

「では、なんてお呼びしたら?」

「ジルと」
 恐らく以前もそうお願いしたはず。

「すいません。私、団長の前ではなんか、うまく演技ができないんです。その、婚約者の。どうしても素が出てしまうみたいで。なぜかわからないのですが。本当に申し訳ありません」

「だから、ジルと呼んで欲しい」

「あ、すいません。ジル様」

「いや。あなたは、面白いな」
 口だけで笑っている。そして、窓枠に右肘をついて、その手に頬を乗せ視線をエレオノーラへ送った。
「どれが本当のエレンなのだろうか」

< 108 / 528 >

この作品をシェア

pagetop