堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 今日も、黒いシックな装いが、彼女の妖艶さを引き立てている。

「どうかした?」
 アンディの肩に両手をのせ、その上に顎を預けているマリーもどことなく艶めかしい。彼女にじっと見惚れていたことに気付かれたのかもしれない。

「いや。そのパーティにどうにかして参加できないか、ということを考えていた」

 あの騎士団の団長の顔はもちろん知っている。幾度となく顔を合わせている。鉄壁の警備を敷いてくるところが、アンディの仕事がやりにくくなっている原因だ。だが、そう言った障害がある方が、楽しいとも思える。つまり彼がいることで仕事に張り合いがある、ということだ。

「できるのではなくて? あなたなら」

 肩が軽くなった。マリーの顔が離れたのだ。そして、彼女の人差し指がアンディの唇に触れる。ほんのり冷たくて、柔らかい彼女の指が。

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