堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

19.作戦を立てました

 建国記念パーティ。その名の通り、この国が成り立った日を祝うパーティで、年に一度、王宮で盛大に開かれる。近隣諸国のそれなりの人々が招待されるという、一年の中で一番大きなパーティである。
 いつもなら招待状なんていうものは届かず、このパーティの警備責任者として現場を仕切っていたジルベルトであるが、こともあろうが国王の名前で招待状が届いてしまったことが不運の始まりとしかいいようがなかった。しかもこの国王、その招待状を他の団員たちに見せつけるかのように、リガウン家に送ってきたわけではなくわざわざ第一騎士団宛てに送ってきたものだから、嫌味としかいいようがない。ということでジルベルトは一度、屋敷に戻る羽目になったのだ。その招待状の件を両親に報告するために。

「よかったわね、招待状が届いて。建国記念パーティなんて、一生、あなたに縁の無いものと思っていましたよ」
 というリガウン侯爵夫人の言葉。
 できることならば、一生縁が無くて良かったのにと思わずにはいられないジルベルト。
「せっかくですから、エレンにはあなたの名前でドレスを送っておきましょう。どんなのがいいかしら。あ、あなたは滅多に着る機会がなかった式典用の騎士服ですね。それに似合うドレスがいいわね」
 一番浮かれているのはこの母親ではないか、とジルベルトは思っていた。

 式典用の騎士服は、その名の通り式典に出席する騎士のための騎士服。警備を担当する騎士の騎士服と違い、機能性に優れていない。きらびやか重視な騎士服だ。団長でありながらも、ことごとく面倒くさい式典にはサニエラを投入していたため、ジルベルトによってこの式典用の騎士服は着る機会はほとんど、めったに、いや全然なかったといっても過言ではないくらいなかった。

< 139 / 528 >

この作品をシェア

pagetop