堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 それはいつものジルベルトのセリフ。なぜか今日は主導権を握っているのはエレオノーラだ。

「ジル様。お顔が赤いですよ。お熱でも?」

 そうやってエレオノーラが顔を近づけてくるから、落ち着こうとしても落ち着けないジルベルト。空いていた左手で彼女の身体を抱き寄せた。

「ジルさま?」

「できれば、あなたを連れて行きたくなかった」
 不快ため息とともにジルベルトがそう言葉を吐き出した。

「もしかして。やはり、婚約者としてふさわしくない、ということでしょうか。私の変装が不十分ということでしょうか」

 そうではない、とジルベルトはエレオノーラの胸元に顔を埋める。

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