堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 だが、ジルベルトが準備した馬は一頭。

「せっかくデートなのだから、二人で乗った方がいいのではないか?」

 つまり、馬が一頭しか準備されていなかったのは、ジルベルトの裏心のため、ということで。
 馬に乗ったジルベルトが手を差し出してきた。エレオノーラがそれを手にすると身体がふわりと浮いた。見事、ジルベルトに横向きに抱っこされてしまったエレオノーラ。だから、彼女の目の前には彼の顔がある。

「あのジル様」
 ジルベルトを見上げながらエレオノーラは彼の名を呼んだ。

「なんだ」
 真面目な顔でエレオノーラを見下ろすジルベルト。

「ちょっとこれでは、疲れませんかね?」
 見上げながら、首を傾ける。

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