堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 エレオノーラはジルベルトにエスコートされ、馬車に乗り込む。その馬車でリガウン家所有の厩まで向かい、そこから馬に乗り換える予定。

「久しぶりだな」
 とジルベルトは馬番に声をかけた。

「ご無沙汰しております。ジルベルト様。ジルベルト様のマックスは今日もご機嫌ですよ」
 馬番は目を細めて、嬉しそうに馬について語る。たいてい馬番という者は、馬を語るときは幸せそうな顔をするものらしい。ここに来るまでの間、ジルベルトがそう言っていた。
 ジルベルトはエレオノーラを簡単に紹介すると、馬番はより一層幸せそうな顔をした。エレオノーラは馬ではないはずだが、と思うエレオノーラ。
 ジルベルトは愛馬を引いて、少しだけ場所を移動した。馬番が言った通り、彼の愛馬のマックスは機嫌がいいようだ。嬉しそうにゆっくりと歩いている。

「あの、ジル様。私も一人で馬に乗れますが?」

 そう、エレオノーラも騎士団所属だ。移動のために馬を使っているため、もちろん一人で乗ることができる。
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