堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

２４．お食事の時間です

　敷物の上に、二人向かい合って座る。その二人の間には、エレオノーラが作ったというお弁当。といっても、サンドイッチだが。

「ジル様は何がお好きですか？」
　バスケットを開けると、様々な種類のサンドイッチが綺麗に並んでいた。

「これは、エレンが作ったのか？」
　ジルベルトは尋ねた。彼女が、こうやって料理ができるというのも意外だったからだ。

「はい。これも潜入調査の賜物ですね。多分、味も食べられる程度のものかとは思いますので」
　エレオノーラはふんわりと笑む。変装はしていない。
　いつもの知的美人な婚約者を演じていない。それはジルベルトがそのままでいい、と言ってくれたから。それから、この周辺に他に人がいないから。
　だから、その笑みは本来のエレオノーラとしての笑み。

「こちらがポテトサラダで、こちらがクリームチーズとベーコンで、こちらが……」
　エレオノーラはサンドイッチの説明をするが、ジルベルトは聞いているのか聞いていないのかわからない。ただじっとそれを見つめている。