堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 失礼な兄たちだ。そこ、面白いところでもなんでもないのだが。

「すまん、意外だっただけだ」
 取り繕うかのようにドミニクが言った。

「いっそのこと、その純潔をリガウン卿に捧げてしまったらどうかしら?」
 始終、表情を変えなかったのが母親。じっと、難しい顔をしたまま何かを考えていたらしい。

「お母様」

「考えてもみなさい。我が家はしがない子爵家。その娘を娶りたいと侯爵家からの申し出ですよ。しかも相手は騎士団の団長。願ってもいない話ではないですか」

「しかし、仕事が」
 エレオノーラが言い訳がましく口を挟むと。

「まったく、そうやって仕事仕事と言っていると、完全に婚期を逃しますよ。ましてあなたは社交界にも参加していない」

「していない、のではなく、できない、の間違いでは?」
 エレオノーラは小さく呟く。
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