堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 参加したくてもさせてもらえないのだ。それをしていないと、表現されるのはいささか語弊がある。だからって、参加したいと思っているわけでもない。面倒くさい付き合いなくて楽だわ、と思っているくらい。

「その辺の細かいところはどうでもよろしい。とにかく、すでに十八。本来であれば婚約者がいてもおかしくはない年頃。むしろ結婚してもおかしくはありません」

 母親の力説に、男性陣は四人とも腕を組み、うむぅと唸っている。
 ここにも結婚していない男が三人いるのだが、それには触れないらしい。まあ、婚約者がいるということで大目に見ているのだろう。さらに、第零騎士団所属という特殊任務部隊。そうやすやすと結婚もできる部隊でもない。

「我が第零騎士団も第一騎士団と任務はこなすことはあるからな。エレンのことを知っていてもらっても悪くはないかもしれないな」
 ダニエルは言う。

「ですが、リガウン団長は、責任を取るとおっしゃったのですよね?」
 エレオノーラが顎に手を当てた。何かを考えているようだ。

「そうだが?」
 ダニエルは語尾をあげる。

「つまり、リガウン団長は別に私のことを好きでもなんとでも思っているわけではなく、あの事故の責任を取りたいとおっしゃっているわけで」
 そこで、エレオノーラの視線は何かを探すかのように斜め上を見つめた。
「ということは、私はリガウン団長の妻、まだ結婚はしていないので、つまり婚約者、いや、まだ届け出もだしていないから恋人? を演じればよろしいということですよね?」

 というエレオノーラの発想に、他の五人は唸るしかなかった。
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