堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「エレンさんには、私の代わりに出てもらうわ」
 それに答えたのはジェイミだった。

「え、だったらジェイミ、君は何をやるんだい?」
 クリスが問う。人一倍の演劇バカのジェイミが配役を譲るなんて、信じられないからだ。彼女をそうさせるまでの何かがエレンという女子生徒にはあったのだろう、とは思うのだが。

「私は、みんなの指導をやりたいの。演じるよりも演劇指導の方をやってみたかったから」
 ジェイミの笑みは生き生きとしていた。

「あのぅ」
 エレオノーラは口を挟んだ。みんな、肝心なことを忘れている。何しろ彼女を無視して勝手に話を進めているのだから。
「私、まだ演劇部に入ると決めたわけでは……」
 と最後まで言えなかったのは、ジェイミが「え? は、はぁああああ?」と奇声をあげてきたからである。ずんずんとエレオノーラに詰め寄って。
「エレンさん。あなた、ここまでやって、演劇部に入らないとか言うつもりなの?」

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