堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

11.調べものです

 授業が終わった放課後。エレオノーラは珍しく学院の図書室に来ていた。今日も演劇部は自主練日だ。
 彼女が図書室に来た理由は、演劇部の卒業公演の劇について、その時代背景やその当時の衣装などを調べたいと思っていたからだ。脚本を書いたのはもちろん演劇部の部員であるが、その脚本がよくできていて、それに応えるためにももう少し自分でもいろいろ調べたいと思っていた。

 劇の舞台は今から百年ほど前のドラギラ。まだ、近隣国と今のような友好的な付き合いはなく、少し血なまぐさい関係。
 ドラギラ騎士団の団員であるノディが隣国のアークエットの娘と恋に落ちる話。テーマとしてはよくある話ではあるが、初めて脚本を通して読んだ時に、エレオノーラは泣いてしまった。しかもリガウン家の屋敷で。演劇部に入部すると決めてクリスから台本をもらい、全部読んだら、とめどなく溢れてくる涙。誰が書いたんだ、この脚本。書籍化してください、っていうくらい、エレオノーラのツボにはまった。
 だから、何が何でもこの劇を成功させたい。配役男女逆転という大技を使ってでも、観ている人に感動を与えたい。観てよかった、と思わせたい。
 そしてエレオノーラが演じるのはもちろんドラギラの騎士。相手の娘役はクリス。

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