堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 姿は先日と違うが、話をすると中身は先日のエレオノーラだった。ジルベルトにとって、自分に似合うようにとそうやって考えてくれた彼女の恰好が嬉しい。嬉しいのだが、彼女との年の差を考えるとそうやって喜んでいいのだろうか、という葛藤もあった。
 だが、目の前の彼女はその葛藤さえも吹き飛ばしてくれるような、少し年齢差を詰めてくれるような恰好だった。
 悪くは無いかもしれない。ちょっと顔がほころぶ。

「エレン、手を」
 馬車から降りるときにジルベルトが手を差し出してくれた。それにエレオノーラはそっと自分の手を重ねる。そのまま手を取り合って、リガウン侯爵家の屋敷へと向かった。
 エレオノーラはその瞬間に仮面をつけた。ジルベルトの婚約者、今はまだ恋人だが、そうなれるような仮面を。

 彼女の雰囲気がかわったことにジルベルトも気付いた。緊張、しているのだろうか、とも思った。だけど、とにかく可愛いと思っている。

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