堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「そうやって先を急ぐような人は嫌いよ」
 ニッコリと笑う彼女の口元はとても鮮やかで美しい。その上目遣いも、可愛らしさと艶やかさの二つを備えている。

「つれないな。でも、それが君の魅力的なところでもある。場所を変えよう。仕事の話がしたい」
 彼女の耳元で、アンディは囁く。他の人に聞かれないように、注意深く。

「ベッドの中で?」
 おどけたようにマリーは尋ねた。

「それもいいかもしれないな」
 男の答えに、マリーは艶やかに笑んだ。
 グラスの残りの液体を、一気に飲み干す二人。

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