堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「貴殿の妹を、妻に娶りたい」
 ダニエルはそのジルベルトの言葉で、思わず口が重力に負けてしまって、ポカンと開けてしまった。空耳、かと思って目の前の彼に視線を向けるが、彼が真面目な顔をしているため、きっと冗談でも空耳でも無いのだろう。

「承知しました。妹に伝えておきます」
 という言葉を紡ぎ出すのが、ダニエルにとって精いっぱいだった。

 だが、すぐさま脳みそを切り替える。今はやるべきことがあるはずだ。あの窃盗団の親玉を捕まえねばならない。

「では、任務がありますので」
 ジルベルトも同じ任務に携わっているにも関わらず、ダニエルはそんなことを言ってその場を去った。
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