堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

2.大変でした

 さて、任務を終えたエレオノーラは、一足お先に屋敷へと戻っていた。
「あぁ、極楽だわ~。この任務後のマッサージがたまわないわ~」
 侍女のパメラに全身を揉み揉みとされている。
 今日の潜入捜査も大成功だった、と自分では思っている。ちょっとしたハプニングはあったけれど。無事に任務完了。
 そして兄は、第零騎士団の団長と騎士団の総帥への報告があるため、王宮へと向かった。ただの諜報部の潜入班の一人であるエレオノーラはそのまま屋敷へと直帰していた。
 疲れたわ~と言って歩きながらタキシードを脱ぎ、その後ろから侍女のパメラがそれを拾ってついてくる。そして自室に入ったころには下着姿、という恐ろしい早脱ぎ術。さらに、侍女であるパメラに「マッサージをお願い」とまで言ってしまう始末。この早脱ぎの技には脱帽ものだ。

 だが、パメラは。
「お嬢様。今日は誰もおりませんからよかったのですが、せめて衣装を脱ぐのは部屋に戻ってからにしてください」

「わかってるわよ。今日は誰もいないからそうしただけよ」
 俯せになりながらも、エレオノーラはぷーっと唇を尖らせた。

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