堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「だったら決まりじゃないか。いざとなったら、その婚約者を狙えばいいんだ。立派な弱みだ。相手が誰か、わかるか?」
 そう、いざとなったらその婚約者を人質にする。男は騎士であっても、恐らく女はどこかのご令嬢だろう。

「婚約者? さあ、今はまだわからないわ。私も、面白い噂っていう程度でしか聞いていないから。もう少し、調べておきましょうか」

「ああ、頼む」
 そこで一口、アンディはグラスの中身を飲んだ。いい案が浮かんだと思っているようだ。「どうせ、どこかのご令嬢だろう。護衛が薄くなったところを攫えばいいんだ」
 くくっとアンディは笑った。

「そうね、その手があるわね。アンディ、あなた、冴えているじゃない。ただの女なら簡単に攫えてしまうものね」
 男を熱っぽい視線で見上げ、マリーは小悪魔のような笑みを浮かべる。

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