指先のブルー
Blue Spring
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ずっと、つまらなかった。
ずっと、くだらなかった。
楽しいことを探して、失敗して、見つからないことを何かの所為にして逃げていた。
あの頃のおれを先輩に知られたら、
彼女はきっと優しくしてくれるのだろうけど、
恥ずかしくて、絶対に知られたくない。
目に映るものは無色。
痛みもなく、何も感じない日々。
「こんなにおいしいごはん、生まれてはじめて食べました!本当です!」
だからきっとだれかが鼻で笑いながら、先輩とおれを、出会わせたんだ。
「落ち込んでたのに、気持ちが軽くなって、またがんばろうって思えました。だから、あの、ありがとうございました!」
晴れやかな笑顔に、瞳に浮かぶちぐはぐな涙。
それをこぼすことなく自分のいるべき場所へと帰っていく真っ直ぐな背中を見て、
おれの料理がなくたって彼女は前を向けたんだろうと思った。
その挫折は、長屋 千晴に、
今まで動かなかった感情や、意識が、おれの持っているものすべてが、取り込まれた瞬間に生まれた。
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