溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺は小田切 優吾。加賀美会長とはうちの父親が知り合いでね、昔から懇意にしてもらってるよ」
「お、だぎり、って……。もしかして」
「あ、知ってる?」
「その名前を知らない人なんていないでしょう……!」
名前を聞いただけで、一気に酔いが覚めた気がした。
小田切 優吾と言えば。
最近先代からその役職を引き継いだ、世界中にリゾートホテルを展開する大企業【Euphoria Resorts】の新社長だ。
確かまだ三十代で、代替わりしてからまだ日が浅いにも関わらず積極的に各国に新たなホテルを建設しており、その手腕から若きホテル王などとも呼ばれている。
事業拡大のために最近はいくつかの国でメディア出演も果たしているらしいと聞いたことがあり、その容姿は誰もが見惚れるほどだとは噂で耳にしていたものの、まさか目の前にいるこの美しい人がその本人だったなんて。
「そんなすごい人が、なんでカジノに……」
「いや、申し訳ないけどパーティーってどれもつまらないから。俺昔からあんまり得意じゃなくて。だからたまに抜け出してこうやって遊んでるんだ。こういうところから次の事業のヒントを得たりすることもあるからね。実は今カジノ付きのホテルを建設中でね、内装をまだ悩んでて。それの勉強も兼ねてるんだ」
そんなVIPだから、先程のハイリミットルームにもすんなり入れたのか。それならば、あの掛け金の額の大きさも頷ける。
驚きつつも納得した。