溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「つまり君は恋愛結婚に憧れてるのに、男性経験が乏しくてこういうシチュエーションに慣れていないわけだ?」
「……っだ、だったらなんですか」
図星なのが恥ずかしくて、落ち着くためにもう一度ファジーネーブルに手を伸ばそうとする。
しかしそれを阻止するかのように、彼の手が先に私のグラスを持ち上げた。
「いや、それならむしろ好都合だなと思って」
「好都合って……」
返してください。と言っても彼は笑うだけで、グラスは全く返ってこない。
困ってしまって彼を見上げるように視線を向けると、次の瞬間。
彼の手がグラスから離れ、私の顎をクイっと持ち上げる。そのまま滑るようにゆるりと撫でられた頰に、私の心臓が大きく跳ねた。
「こんなに美しくて魅力的な女性が目の前にいるんだ。しかも男慣れしてないって?そんなの口説きたくなるに決まってるだろ?」
交わった視線。その切れ長の、力強い視線に目が釘付けになる。
「か、からかってるんですか!?」
「いや?……本気」
熱く沸るようなその視線に囚われたように、私の身体は動かなくなって。
もう一度笑った彼は、私の耳元に顔を寄せて告げる。
「俺としてみない?」
「……な、にを?」
「恋・愛・結・婚」
「……は……!?」
「俺、君に惚れたみたい」
「!?」
ぶわっ……と。
よくわからない感情が一瞬にして全身を包み込む。
今にも飛び出しそうなほど速く脈打つ鼓動。一瞬にして耳まで真っ赤に染まったことが嫌でもわかる。
上手く声を発することができなくて、私は妖艶に笑う彼に視線を奪われたままだ。
するりと私の頬を一度撫で、私の反応を一通り楽しんだとばかりに彼はようやく少し離れる。
やっと呼吸ができた気がして、再び胸に手を当てた。