溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「慎ちゃん!」
あからさまな態度に慌てて嗜めようとするものの、優吾さんがそっと私を制止する。
「紅葉、いいよ。突然現れたら誰だって怪しいと思うから」
「でも……」
優吾さんは私の手を握り、慎ちゃんに向き直った。
「一ヶ月ほど前から紅葉さんと交際させていただいております。今日はヨーロッパから帰国したので、どうしてもすぐに彼女に会いたくてここまで来てしまいました」
「こ、交際……!?紅葉と!?」
「何その言い方」
「……だってお前、ずっと恋愛恋愛って言ってた割にそんな相手いなかっただろ」
図星すぎて、数回咳払いする。
「……まぁそれはそうなんだけど。でも今は色々あって、優吾さんと付き合ってるの」
「……」
納得していなさそうな慎ちゃんだったものの、さすがに優吾さんの前でそれ以上言うつもりは無かったらしく、優吾さんに挨拶するとそのまま帰っていった。
それを見送ってから優吾さんを見上げる。
「紅葉、この後時間ある?食事でもどう?」
「はい。行きたいです」
両親には出かけてくるから食事はいらないとだけ連絡し、優吾さんと食事に向かう。
優吾さんは運転手付きの車で来たようで、その後部座席に二人並んで腰掛けるとすぐに発進した。